【米国シアトル視察報告】ゲームプラットフォーム「Steam」を提供するValve Corp.の組織とは
先日、当社の幹部社員たちが米国シアトルに渡米し、世界的なIT企業やNPO団体など約10社への視察を行いました。興味深い視察報告のレポートを頂きましたので、本ブログでも一部を紹介させていただきます。
米国にある起業家の都市というと、シリコンバレーという印象がありますが、実はシアトルも負けず劣らずの起業家の街です。Amazonやスターバックス、ボーイング、エクスペディアなど名だたる企業がシアトルで生まれ、そして、あのMicrosoftもシアトルに本社を構えています。大手IT企業が多い街ということで、優秀な人材の獲得合戦の趣もあるそうで、新卒でも年俸1,000万円を得ている人たちもいるそうです。
シアトルには数年前に私も視察に行き、そこで受けた衝撃を会社のメンバーに伝えたいと思い、この度、幹部社員を対象にシアトルへの視察を実施いたしました。
今回の視察は、約5日間の滞在で10社の企業やNPO団体を訪問。訪問先は、Microsoft創業者のビル・ゲイツ氏とその妻メリンダ氏によって創設された基金団体「Bill & Melinda Gates Foundation」、Microsoft本社、非上場でありながら世界一の営業利益を上げると言われているValve Corp.、日本人が創業したwebホスティング企業 PSP inc.、シアトル発祥であるスターバックスコーヒーの1号店などなど多彩な団体を訪問しました。シアトル視察後に幹部社員たちから私に届いたレポートは40ページ弱にもなり、大きな刺激となったことがそのレポートの量そして内容からも感じました。
なお、本視察の中で1社、特にご紹介したい企業がございましたので共有させて頂きます。視察先の中で最も衝撃が大きかった企業とレポートにも力強く書かれ、私自身もその会社の話を聞いて非常に驚きました。
その会社とはゲームプラットフォームの「Steam」開発とコンピュータゲーム制作を行うValve Corp.という会社です。
ゲームに馴染みのない方には、あまり耳慣れない企業かもしれませんが、Valve Corp.が手がけるゲームプラットフォーム「Steam」は、インターネットで調べたところ1億人以上が会員として登録し、そのうち4,000万人がアクティブユーザー、オンラインゲームへの同時接続者は平均1,800万人、そして今も会員が増加し続けている驚くべきwebサービスです。Valve Corp.は非上場のため売上高などの数値は非公開、当日の視察も際もそうした情報は完全に非公開だったそうですが、こちらもインターネットの情報によると売上高は5,000億円程度、一説には非上場でありながら世界一の営業利益を上げているとも言われています。更に驚くべきなのは、これだけの規模のサービスを提供するValve Corp.の従業員数は260名!つまり社員1人あたりで20億円近くの売上を上げている計算になります。
ではこのValve Corp.、どの様な組織形態になっているかと言うと、これも驚いたのですが、組織はフルフラットだそうです。つまり経営幹部以外は役職階層を設けずに全員が同等という、通常の企業とは全く異なる組織体系になっています。
また、このValve Corp.では、仕事は自らが最も貢献できることを考え実行する、という考えのもと組織が運営されており、やりたいことをチームで意見を出し合って、自分がやりたいことをやれるそうです。この様にメンバーが能動的に働くことが、生産性の高い組織を生み出しているそうです。
そうした組織で人事評価はどうなっているかというと、一緒に働くメンバーが評価するそうです。また採用権もメンバーにあり、欲しいと思う人材を募集し、退職してもらうか否かも、チームで決めるそうです。
人材採用は重要度の高い業務という認識をしており、会社の色に合う人かどうかというのも、採用基準になっているそうです。では、どんな人材が求められるかというと、T字型人材だそうです。すなわち、深い専門性を持ちながら、幅広い知識やコミュニケーション能力を有する人材です。逆に、専門性しか持たないI字型人材を、迎えることはないそうです。
また働きやすい環境を提供するという理由から、施設は非常に充実しており、社内に理容店や美容院があるほか、専属スタッフが15名いるジムもあり、また施設の充実だけでなく、全社員かつ家族同伴で1週間のハワイ旅行なども実施しているそうです。
少し紹介しただけでも、人材にどれだけ重きを置いているかが顕著にわかりますが、見逃してはならないのは、これまで述べてきた自由度や施設・福利厚生の充実には、「自由なだけではなく、義務を果たす」というのが前提としてあることです。
これらは責任や義務を果たせる人たちの集まりであるという前提の上に成り立っており、環境や自由を与えることで、パフォーマンスを高めることができるという仕組みになっています。「自由」には、結果・成果を出す「義務」がついて回る。「義務」を常に意識しながら緊張感を持って仕事に取り組み、自律の精神があるからこそ、「自由」な環境で制約なく働くのでしょう。
そのためValve Corp.の取り組みの一部分だけを切り取っても、きっとうまくいかないでしょう。余談ですが、Google社では、一時期、開発に注力するために中間管理職を廃止したそうですが、会社の統率や連絡等に支障が発生したとして、マネージャー等の管理層を復活させているほどです。業種・業態や様々な要因などにより大きく異なりますので、一概には言えませんが、フルフラットの組織の難しさを感じて頂けるのではないでしょうか。
さて、話は戻りますが、視察に参加した幹部社員たちも、異文化の生活や企業に接したことで、仕事に対する価値観などに大きな刺激を受けた様です。今回の視察の結果が、今後どの様な形となって活きてくるのか、楽しみでなりません。
今後も、当社グループが持続的成長を続けて行けるよう、引き続き尽力してまいります。
「Valve Corp.の社内風景」